雨 「あーっ・・・」 気だるそうな叫びが、阿笠邸の一室で響いた。 外は雨。もうカレンダーは秋色に染まっているというのに、未だ蒸し暑く、湿気のこもった天気に、コナンはうんざりしていた。 「ったく・・・こういう天気は嫌いなんだよ」 まあまあ、と宥める博士をよそに、コナンはソファに寝転んだ。夏休みに発売した推理小説は、もうとっくに頭の中だ。特にやる気も起きずに、そのまま眠ってしまおうとした。 「全く・・・どうせ寝るなら探偵事務所に帰ればいいのに」 地下室から戻ってきた哀が、呆れ顔で言う。 「今日は誰もいねーんだよ、夜まで。蘭は買い物、おっちゃんは麻雀」 「あら、不機嫌の元凶は、その所為?」 「うっせーな・・・」 「図星ね」 コナンは小悪魔的な笑みを浮かべる哀から目を逸らし、窓の外を眺めた。そこには相変わらず灰色の雲と、しとしとと降り続く雨。 「雨にはあんまりいい思い出が無いからな」 雨を見れば、否応にも脳裏に甦る事件。後になって、その事件で会った母親の友人が組織の一員だった事が解り、通り魔に狙われた事も、蘭がずっとその事件を自分の所為だと気にしていた事も、後味の悪さを引き立たせた。勿論、あの渡米であったのは、嫌な事だけではないのだが。 「晴れの日は沢山あるけど。でも過去振り返っちまうのも微妙だな。なんか、俺が昔とは違うって、思い知らされてるみてーでさ」 蘭の側にコナンとして居る事。今のままではそれが精一杯であっても、ほんの少し感じる、疎外感。 「私に言わせれば、振り返れる思い出があるだけで羨ましい事だけど」 哀はコーヒーを飲んで向かいのソファに腰を下ろした。ファッション誌を広げる哀に、コナンは視線を向ける。 「・・・妙に素直だな」 「たまにはね、悪い?」 「いや、こっちこそ無神経だった」 「気にしてないわ」 「・・・俺が、蘭との立場の違いに疎外感感じるってのも、自分勝手だな」 少し間を置いて、コナンが淡々と言った。 「どうして?」 「いや、きっと蘭も感じてるだろうから、俺と同じ。ってか俺が何も言えないのが悪いんだし」 何も言えずに無理矢理つじつまを合わせた言い訳に、彼女は納得しているのだろうか。 「人間、たまには弱音を吐きたくなるときだってあるわ」 哀は、表情を変えずに、でも優しい口調で言う。 「・・・かもな」 弱音、を言ったつもりではない。けれど、物思いにふけりたくなる時位、きっと誰にでもある。 「絶対、組織を潰してやるさ」 まだ、尻尾すら掴みきれていない相手だけれど。 「頼むな、灰原」 「何を?」とは言わない。けれど、言いたい事は解っている。哀にとっても、成し遂げたい事だ。 「・・・ええ、必ず」 コナンは、自身の小さな拳に決意を込めて、ぎゅっと握り締める。そしてそのまま、その場を立ち去ろうとした。 「何処いくの?」 「・・・電話。蘭の声が聞きたい」 振り返ってそう告げると、コナンは足早に部屋を出た。 fin *********************** タイトル適当過ぎ;; うちのサイトはやっぱり「新蘭前提」サイトです。新蘭シーンが全く無い(爆) |
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