Confession









 好きな人には好きって伝えたい。
 例え、受け入れてくれる可能性が0%だとしても、振られる可能性が100%だとしても。


 私の中に閉じこめたままで、この想いとさよならしちゃうのは絶対に嫌だったの。



 私知ってるよ?あなたは私の事、妹みたいにしか思ってないことくらい。
 あなたは私なんかとても適わない別の人を本気であいしてる事くらい。


 でもいいんだ、素直に気持ちを伝えようってきめたんだもん。
 伝えないで終わっちゃうよりずっといいもん。













 夏も近付くある日、予鈴の直前になってコナンは歩美に引き止められた。

「コナン君、今日何処で待ち合わせよっか!」
「え?」
「ほら、元太君と光彦君で家に来て遊ぼうって言ってたじゃない」
「あれ、そうだっけ…?」
 コナンは首を傾げる。

「コナン君は私の家に来るの初めてだよね」
「ああ、そうだけど」
「そっか」
 と、歩美は小学生らしからぬ表情を見せる。歩美のいつもと違う、張り詰めた様子が気になったコナンだったが、チャイムが鳴ったのでそのまま席に着いてしまった。


“歩美…?あいつどーしたんだろ?”


 そして学校が終わり、待ち合わせ場所である米花公園にコナンが向かうと、そこには既に歩美がいる。 「あれ?光彦達は?」
「う、うん・・・本当は誘ってないの。コナン君に二人っきりで話したい事あったから・・・」
「話したい事?」
 コナンはいきなりの歩美の言葉に驚く。

 ひとまず二人はベンチに座り、歩美は口を開いた。
「…あのさ、私ね……コナン君の事…」






“例え、振られる可能性が100%だとしても・・・伝えたい”







 歩美の心臓は未だかつてない程高鳴っていた。





「博士ー、スケボーの修理終わったかー?」
 次の日、コナンが阿笠博士の家にいくとそこには彼の姿はなく、パソコンに向き合った哀がいた。

「さっき出掛けてったわよ。それよりも工藤君、貴方、吉田さんを振ったんですってね」

「・・・なんでがんなこと知ってんだよ」
「ゆうべ彼女が泣きながら電話してきたのよ、江戸川君に振られたってね」

 哀は、ディスプレイと向かい合ったままコナンに問う。

「あ、歩美泣いてたのか・・・?」
「私、前に言ったわよね、吉田さんを泣かせたら許さないって」

“マジかよ・・・”すると哀はくすっと笑ってコナンを見た。

「嘘よ、驚いたかしら。彼女、泣いてなんかいなかったわ」

「灰原、お前なぁ・・・」
「でも彼女、泣いてなかったとしても悲しませた事には変わりないんじゃなくて?」
「あ?ああ、そーかもしれねーけど仕方ねーだろ?でも驚いたぜ。まさか歩美からあんな事言われるとは思わなかったし…」







『私コナン君の事大好き。だからコナン君の本音が聞きたいの』







“あんなに素直に言えるなんてな・・・”

 コナンは椅子に座ると、あの時の歩美を思い出した。
「じゃ、貴方も吉田さんにならって素直になることね、早く伝えないと学祭の時みたく言えないままでで終わるわよ?」

「ああ・・・」
 コナンは浮かない返事をする。

「貴方らしくない返事ね、何か思う所でもあって?」
「別に・・・ただ、どーしたら素直になれっかなって考えてた」
「素直・・・残念だけど私は知らないわよ」
「別にお前に聞いちゃいねーよ」
「あら、そう」
 するとコナンは立ち上がり、窓際に立って外を見た。

「俺は蘭の事が好きだって自覚した後だって素直になれなかったんだ。いつだって意地悪な言葉で本当の気持ちを隠してた・・・いや、あの頃は別に伝えなくてもいいや・・・ってくらい思ってたかもな。蘭が俺の事どう思ってんのかなんて解らなかったし俺は俺で蘭の顔見ると素直になれなかったから、今このまま幼なじみでも、蘭の傍にいられればいい──なんて思ってた。でも、そうやって本音を長い間隠し続けてきた結果がコレだ。笑っちちまうぜ」

 そう言うと、コナンは自分の小さな身体を眺める。

「正体を隠さなきゃならねぇこんな身体じゃ、今…あいつを抱き締めることも、想いを伝えることすら出来ねー…」

 コナンは拳をぎゅっと握り、窓ガラスに叩きつけた。

「後悔してるの?」
「ったりめーだろ?俺も歩美くれー素直だったら、好きな奴に好きって言えていたら・・・って、正直羨ましかったぜ。」







『あのね、私知ってるの、コナン君が誰を好きなのかも…私の事友達とか、妹みたいにしか思ってないのも』



『だけど言いたいの。私コナン君の事が大好き、誰より好き。だから正直、蘭お姉さんや灰原さんに嫉妬するときもあるけど、でも…コナン君が好きなの!だから伝えたくて……私の事どう思ってるかコナン君の口から聞きたくて…』







「それで、吉田さんにちゃんと言ったの?」
「ああ、一応な・・・」







『俺さ、好きな奴がいるから・・・だから歩美ちゃんの気持ちには答えらんねーんだ・・・』


『その人・・・どんな人?』


『・・・そいつは幼なじみで、気が強くて、いじっぱりで、涙もろくて・・・今はさ、ちょっと逢えねーくらい遠くにいるけど・・・でも』


『ありがと・・・ちゃんと言ってくれて嬉しい』







 彼女のその時の笑顔は小学生のそれではなかった。自分より十歳も年下の、好奇心旺盛な小さな女の子の筈の歩美がとても、とても大きく見えた。

「強いわね・・・吉田さん」
「ああ、ただの女の子だと思ってたんだけどな・・・」

「素直になんねーとな・・・今のままじゃ、例え元の身体に戻っても言えねー気がするし・・・ほら、米花センタービルのレストランでだって結局言えなかった」
「そうね」

「それに約束しちまったんだよ…歩美と…」







『あのさコナン君、その人に気持ちを伝えるって約束して?』







“「素直」になるよ”







『じゃないと私の告白、無駄になっちゃう・・・』







“絶対に蘭に伝えるよ…もう二度とこんな想いはしたくねーから”















 その夜、皆が寝静まったのを確認すると、コナンは一人事務所に下りてきた。青白く照らされた外を眺めながら、そっと眼鏡を外す。変声機のダイヤルを廻しながらある人へ電話をかける。

 ――蘭だ。





「もしもし?蘭か?俺だけど・・・起こしちまったみてーだな・・・わりい。―――え?そんなんじゃねーよ。―――ただ・・・」







 コナンは窓から見える空を見上げた。











「なーんか、声…聞きたくなっちまってよー・・・」












“今はこれが精一杯。眼鏡外して少しでも新一として・・・ありのままで蘭と話すことしか・・・出来ねーけど。でも絶対、戻ったら・・・伝えるから・・・”







 素直になろう。大切な人に好きって言えるように。




 歩美の告白は新一に変化をもたらした。だからきっと元の姿に戻れたときは、素直になれた新一が、蘭の前にいるのだろう。







『ねぇコナン君、ずっと友達でいてくれる?』

その言葉に、コナンは笑顔で答える。

『ったりめーだろ?』













 電話の最中、ふと歩美の笑顔がコナンの脳裏に浮かんだ。

















 Fin
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歩美ちゃん好きですvv
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