シオドキ











 光彦が初めて彼に疑惑を持ったのは、彼が知人の刑事の結婚式で記帳しているのを見た時だ。
 すらすらと丁寧な字で書かれた「工藤新一」という名前を見て、どこか懐かしい気がした。


(・・・そうだ、彼の字だ)

 もう7.8年くらい前になるだろうか。毎日のように一緒になって遊んだ眼鏡の友人の字だ。小学生の癖に綺麗な字を書いていた少年―――江戸川コナン。
 大人びているかと思えばわざとらしいまでの子供らしさを見せていた。たった一年しか一緒にいなかったけれど、当時の自分達はコナンが中心に回っていたし、嫉妬しながらも憧れを抱いていたっけ。そういえば、返されたコナンのテストの答案は、子供らしく崩れた字で書かれていたのを憶えている。

(今思えば、可笑しな事ですよね)

 幼い時の影響か、様々な分野に向けられた好奇心か―――たどり着いた探偵になりたいという夢。知識を詰め込み、物事を経験していくうちに雑学とは身につくのがどれほど大変な事か理解した。たまたま近くに若い頃から活躍している探偵がいたので、環境に恵まれた、と言っていいのだけれど。だからこそ今考えれば、コナンの知識は小学生ではありえない。

(コナン君、貴方は何を隠していたんですか・・・?)
 元々、彼との間に微妙な壁を感じてはいた。今なら納得できる、壁。コナンはもう自分達の周りにはいない。何も言わずに行ってしまった。





「光彦、帰るぞ」
 彼の後について現場を訪れるようになって、探偵見習いという事で、光彦は探偵としての経験値を上げていた。工藤新一は相変わらずの名探偵ぶりを披露している。光彦は彼に憧れた。――そう、あの頃のように。




「今回の推理、やっぱりお見事でした」
「そうか?まあ、でも光彦も着眼点良くなってるよ」
 ぶっきらぼうな返事はいつもの事。警視庁帰りの公園沿いを歩きながら、新一は言う。
「でも最近警視庁に通い詰めじゃないですか、休みも取って・・・蘭さん心配しますよ」
 光彦はまるで対等に、会話を始める。新一も気にした様子は無い。

「大丈夫。蘭に心配かけるようなことはもうしない。あの時みたいに」
 そう言いながら新一は公園入り口に転がってきた、サッカーボールを蹴り上げてリフティングを始める。その流れるようなボールさばきが懐かしかった。
(コナン君の得意な、リフティング・・・)



 ああ、きっと新一さんは。
 僕の予想通り。  彼と―――――



「今度、息抜きに遊びに行きませんか?歩美ちゃん達と。小学生の頃みたいに皆で」
 意を決して尋ねた質問は、簡単な、ひっかけ。
「そうだな」
 間合いを入れない返事に驚きながらも、疑惑は確信に変わる。
「・・・新一さん」
 やっぱり貴方は、と言いかけて、彼が光彦の言葉を遮った。
「――バレちまったな」
 そう、コナン=新一であることが、確定した。光彦が、ずっと疑っていた事。
「わざとでしょう?」
 間髪入れずに尋ねた。あの名探偵工藤新一が、こんな簡単な引っ掛けにかかる訳がない。

「何の事?」
「とぼけないで下さい」  彼のおどけた態度に苦笑する。
(貴方ほどの人なら、あんな質問に惑わされるわけ無いじゃないですか。・・・コナン君)





「・・・・そろそろ潮時かなって思っただけだよ」
 ボールを蹴りながら、静かな口調だった。
「元々いつか話すつもりだった。隠し通せる訳も、つもりもなかったし」
 最初に気付くのはやっぱりオメーだったな、と付け足す。

「歩美ちゃんは、何となく気付いているかも」
「かもな」
「灰原さんはコナン君と同じ・・・」
 一瞬言葉に詰まる。新一が光彦の言いたい事を察してくれた。
「ああ、そうだよ」
「元太君、驚きますよ?」
「楽しみじゃねーか」
 そう言って新一は、にかっと笑ってみせた。

(昔と、全然変わりないんですね)
 あの頃の、憧れとほんの少しの嫉妬を抱いた彼と。
















 また皆で、サッカーでもしましょうか。それとも探偵ゴッコ?
 僕らなら、探偵事務所、いつかは開けそうな気がするんです。



 ――――バーロォ!まだ修業が足りねーよ!



 大丈夫ですよ、コナン君が帰ってきましたから。
 僕だって、自信が無いわけじゃないです。



 ――――俺も入ってる訳?



 当たり前じゃないですか、仲間なんですから。



 ――そうだな。



 少年探偵団は永久に不滅ですね。
















 新一は、光彦の言葉に「ああ」と優しく頷いた。
 再び5人が揃う日は、もうすぐ。
 

















fin

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結局何が言いたいのかと言うと、近い将来、コナン=新一に光彦は気付いて欲しいのと、次期高校生探偵であって欲しい事と、新一と少年探偵団は昔と変わらぬ関係であって欲しいと言う事。そして所詮私は光彦スキーで光哀スキーである事。
決して光新とか新光とかではありませんよ(一応)
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